2006年04月23日

ディーゼルについての整理

この半年くらいは、「西欧での乗用車のディーゼル率が5割を超え」というニュースがあっちこっちで出ていたわけだけど、

オーストリア、ベルギー、フランスなんかだと、7割を超えて、スグにも8割に届いちゃうんじゃないかっていう勢いだ。
あくまでも西欧全体で5割なんであって、それはスカンジナビア諸国とかイギリスとかの普及率の低さが足をひっぱってるだけなんだよね。

それほど、乗用車のエンジンがディーゼルであることが、当たり前であることを超えて、「そうであるべき」に近いものになりつつある。

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この流れは、もちろん
90年代半ばから、コモンレールシステム使った「クリーンディーゼル」が登場したことから始まる。

低燃費でトルクフルというディーゼルの良いところをそのまま活かし発展させつつ、
PM(粒子状物質)とNOxの排出量を大幅に削減して、
今までよりずっと静かでパワフルなものになった。

今じゃ、殆ど各社、クリーンディーゼルと呼ばれる新世代のディーゼルエンジンを持っている。
有名なところだと、フォルクスワーゲン・アウディグループのTDI、プジョー・シトロエンのHDiとか、メルセデスのCDI(bluetec)とかだよね。

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この何年間かは、既に、ディーゼル車は、ディーゼル車じゃないクルマに乗っている人からは、「いいなー、うらやましいなー」って見られる対象になってるらしい。

HDIとかTDIはちょっとしたブランド効果を持ち始めている。

それから、レンタカーとかは、ガソリン車とディーゼル車が並んでると、ガソリン車を選ぶ人がいないから、フランスとかドイツとかだと、もうガソリン車のレンタカーは置いてないに等しい状況らしいね。

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ボッシュが仕掛けたこと・技術進化を別にして
欧州で(欧州でばかり)ディーゼルが主流になったことについて定説になっているのは
以下の3つ。

1)粒子状物質を巡る事情の違い(都市環境問題)
 都市サイズが比較的小さく、貿易風が粒子状物質を吹き飛ばす。
 クルマの利用全体をみると、都市間移動で使う分が多く、平均車速も速い。
 東京とかロスのような慢性的大渋滞っていうのも少ない。

2)ガソリンの高さ(おサイフの問題)
  さらにに欧州で主に使われる北海油田産は、中東産とかと比べて遥かに硫黄分が少なく、
  排気ガスの清浄化がより簡単。

3)二酸化炭素排出量の少なさ(地球環境問題)

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私は、この新世代のクリーンディーゼル搭載車ってのに乗ったことはないから、実感としてはわからないのだけど、いろいろなレポートを見ていると、
排気はとにかくスグにはわからないくらいクリーンになっているらしいし、
音もガソリン車に比べればまだ少しは大きいのだけど、それでもかなり静かになっていて、例えば、ちょっと暖かくなってくると四六時中「ブウィーン」って鳴ってる欧州車のラジエーターファンの音が気にならないような人なら、まったく気にならないって程度らしい....よくわかんないな。なんにしても、知らない人が乗ってスグにディーゼルだって気付くようなレベルじゃなくて、高速でクルーズ状態とかなら、まったくわからないっていうレベルらしい。
ものすっごくトルクフルなのはもちろん、以前は弱かった高速性能も、そうとうなものらしい。

そのスポーツ性能だけど、
昨年、アウディとプジョーが、今後はルマンにディーゼルで参戦するって発表したよね。

もう既に、「ディーゼルの良いところをそのままに、悪いところを大幅に改善」ってレベルじゃなくて、
「ディーゼルの方がスポーツ性能も高いぞ」くらいのことをアピールしていきたいらしい。

アウディだかプジョーだか忘れたが...プジョーだっけ?...たしか発表時に「いきなり優勝」を宣言してたっけ。

本当に優勝すれば、世界のクルマ好きの、ディーゼルを見る目を変えさせる強力なエピソードになるのは間違いないね。

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地球環境問題の観点で、
ディーゼルが優れているのは、二酸化炭素排出量の少なさだけじゃない。

技術的な可能性として、遙かにいろいろなものを燃やせるって点こそが、長い目で見た時の大きな優位点だ。

天然ガスをもとにした合成燃料(GTL)とか、バイオマス燃料(BTL)とか、様々な廃油をもとにしたものとか...

バイオマス燃料なら、持続的なシステムをつくれるわけだし。

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クリーンとか燃費とかって言った時に、
当面のライバルになるのは、ハイブリッドなわけだけど、

単純には比べられないけど、あえて比べるなら

ディーゼル
●おサイフに優しい。
 だっていくらコストダウンが急速に進んでいるとはいえ、ハイブリッドはやっぱりディーゼルよりも複雑で高価だ。元を取るにはかなり走らなきゃ。
 高速移動だけ比べればハイブリッドにもぜーんぜん燃費で負けない。それにだいたいディーゼルオイルはガソリンよりずっと安い。
●とにかくトルクフル。

ハイブリッド
●都市内移動(発進・加速・減速を繰り返す)ではやっぱりハイブリッドの方が燃費が良い。
●いっくらディーゼルがクリーンになったとはいえ、ハイブリッドはよりクリーンだ。...使い方によるけど。充分使えるプラグインハイブリッドができたら殆ど決定的に効率が良い。
●ハイブリッドは、異次元とも言える体験性がある...強力なパワーと静けさ。
●でも、製品製造まで含めて本当にエコか??ってのはある。
大量の電池とかね。もちろんこれもどれだけ使うかでかわるわけだけど...もし廃車までの走行距離が少なければ決してエコじゃないよな。

つまり、まー大まかに見て様々な面で、ハイブリッドはプレミアムな技術であって、
ディーゼルは、もっとお手軽に現状を変える力がある。
(といっても、DPFとかの継続開発はやっぱり相当かかるわけだけど...逆に、トヨタに言わせれば、ハイブリッドのコストはどんどん下がるってなるし)

最近、中国とかから、ハイブリッドよりもディーゼルを重視する方針に傾いたみたいなことが伝わってくるけど、そりゃそうかもなー。逆にハイブリッド重視ってのも聞こえてくるけど。

日本同様、ガソリン車が圧倒的につよい米国でも、ディーゼル普及の芽が出てきているというレポートも最近時々目にするようになってきた。

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メルセデスとかは、ディーゼルハイブリッドの開発を頑張ってるよね。
当面、これは、いいとこ取りで理想的かもね。

もちろんこういう動きに...欧州メーカーの尻に火を付けたのは、米国市場でのハイブリッドの急速な注目度向上があるわけだけど。

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ハイブリッドが独走すると怖いってのは、当面の米国市場とかのこととか、ブランドイメージの問題とかもあるわけだけど、
長期的に見ると、もっと別の側面もある。

燃料電池車の先行きは、いろいろな面で暗雲たれ込め始めているけど、
なんにしても、今考えられる範囲の究極のエコカーが
インホイールモーターで駆動するっての自体は変わらないだろう。

だって、駆動系があったら、どんなにがんばったって、パワーの伝達ロスが大きくて、もともとの燃料が持ってるエネルギーの5割くらいはどうしたって失っちゃうわけだからね。

だとすれば、実際のビジネスの中で、モーターとか電池とかその制御とかの技術の蓄積と生産・コストダウンをすすめていけるハイブリッドは有利だし、
ハイブリッドを手がけないと、この先いつかどこかで決定的な遅れをとることになるかもしれないわけだ。

これもあって、「ディーゼルの方が良いに決まってる」とか言ってた欧州メーカーとかドイツ政府とかでさえ、ハイブリッド頑張ろうってことになってるんじゃないかな?

いや、勝手な想像だけどさ。

ちなみに環境問題とは別だけど、クルマの絶対性能ってことでも、どう考えたって...パワーも、運動性に関わる部分も、室内空間の確保とか自由なレイアウトってことでも、ITSとかの観点でも...最後がモーターの方が圧倒的に有利だしね。
(もちろんこれは電気をどう供給するかは無視した見方だけど)

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そうそう、今年はディーゼルが乗ったメルセデスのEクラスが発売されるわけだけど、
SUVとかじゃなくてセダンタイプのディーゼルってのは、絶えて久しかったわけだよね。日本市場では。

そこで問題になりそうなのが、ガソリンスタンドでの給油間違いの事故。

一時、もともとのディーゼル普及率が低くて、この4-5年で急に増えてきたイギリスとかでは、
ディーゼル車にガソリン給油されて、壊された
なんてのが、よくあったらしいからさ。

でもって、給油口付近に貼って、ディーゼル車だってのをアピールするシールがよく売れたなんていうニュースも見たことがある。

ディーゼルのEクラス買う人は、そのシールも買った方がいいかもね。

ほら、洗車と給油お願いね。なんて言ってカギを渡しちゃったりする人はさ。

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ハイブリッドを応援したい私としては、
...つーか単純に、エコレースとかじゃなくて、より頂点に近いスピードレースの世界で、モーター駆動のレーシングカーをみてみたい私としては、
ディーゼルだけじゃなくて、トヨタも(いやレクサスの名前で)ハイブリッドでルマンに参戦して欲しいとか思うのだけど。

技術的にも難しいところがいろいろあるかもしれないけど。

...それ以上に、政治的にもなにかもな。

マツダがロータリーで躍進すると、スグに実質的にロータリーじゃどうにもならないようにレギュレーション変えちゃったものね。
最後に優勝できて良かったけど。

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ホンダは、欧州の状況見て、こりゃダメだって
自前でディーゼル開発して(CTDi)いきなりエンジン賞とっちゃったね。
さすがエンジン屋。

スズキが欧州でやたらと好調、成長率が高いのは、
スイフトとかの評価がやたらと良いのもあるけど
かなり積極的にディーゼル搭載車をラインナップしたからとも言われている。

もちろん、トヨタも、今欧州市場で絶好調のマツダも
独自のクリーンディーゼルを持っていて、欧州市場には積極的に投入している。

トヨタのD4D(D-CAT),マツダのMZ-CD(←これはDPFの名称だったと思う)。

--

日本メーカーが、より大きなクラスへのディーゼル投入が遅れがちなのは、
実は、エンジンじゃなくて
大トルクに耐えるミッションの開発が追いつかないから...って話も、どっかに出てたな。
CVTとかに散々投資してるけど、CVTは今のところディーゼルには向かないし。

どうなんでしょう?

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コモンレールシステムの元祖は、
ボッシュだって書いてあるのと
実はデンソーだ
って書いてあるのと両方あるけど
どうなの?

まーなんにしても、この市場を開花させたのはボッシュなのは間違いないのだけど。
posted by waki at 01:05 | Comment(7) | TrackBack(0) このエントリーを含むはてなブックマーク
この記事へのコメント
HDi乗りです。
トヨタのD−4Dの一部と、マツダのMZ−CDはPSA製、つまりHDiです(MZR−CDは自社製)。スズキ用のディーゼルエンジンを供給しているのは主にルノーとフィアットで、自製はまだだったと思います。

ディーゼルのトルクとトランスミッションについて、欧州メーカーは自動化MT(VW:DSG、PSA:MCP、ルノー:Quickshiftなど)の量産体制が整っているので問題はないと思っています。小容量トルコンATやCVTしか持たない日本メーカーには確かに厳しいかもしれませんね。

現在のコモンレールの原型はマネッティ・マレッリが開発したUnijetです(1985年)。この研究が引き継がれて、1997年にボッシュが市場投入しました。デンソーは量産開始したのは1995年でした。SAEの論文でコモンレールという言葉を始めて使ったのがデンソーのようで、その意味ではパイオニアかもしれません。発明としての原型は1913年、Gaff氏により行われています。
Posted by P307HDi at 2006年04月24日 08:10
P307HDiさん、こんにちは。

お勉強になります。
ありがとうございます。

最後のところ、
元祖のボッシュもコモンレールは一時見限ってて、
デンソーが始めた後に、急きょフィアット関係会社のコモンレール部門を買った
そこから実質的にリスタートと読めるように書いてあるのもあるんですけど...

あと、
>90年代半ばにボッシュのコモンレールシステム使った「クリーンディーゼル」が、フォルクスワーゲン・アウディから登場したことから始まる。TDIだね。
って、わたしが書いちゃったのは、これはきっと間違いですね。
修正しておきます。
Posted by わき at 2006年04月24日 13:37
こんにちは。ディーゼル自体の将来はBIO燃料を使ってと言うことなのでしょう。問題は排ガス塵フィルターで、経済性やメンテナンスを考えるとまだ完成してないようです。

Dエンジンの購入価格は高くとも、長持ちしてメインテナンスが少なくて済むからの経済性もあるので、塵は永遠の課題でしょうか。もちろんBIO燃料改良なども平行して進んでいるようですが。

ハイブリッドも先ずの目標は水素エンジンとの併用となるのでしょうか?
Posted by pfaelzerwein at 2006年05月18日 01:18
pfaelzerweinさん、こんばんは。

>経済性やメンテナンスを考えるとまだ完成してないようです。

PM対策は、どんどん厳しくなる基準に応えてるのだけは確かですよね。
...素人なんで詳しいことはわかんないんですけど。

私としては、フランスとかは、そのうちにディーゼルの普及のしすぎ...もう既に乗用車の8割だし...が問題になると思います。

原油買うのに効率悪いですものね。

>ハイブリッドも先ずの目標は水素エンジンとの併用となるのでしょうか?

繰り返し、言うまでもなく「私は、ド素人です」って、断った上なんですけど、
水素ってどうなんでしょうね?
一昔前に言われてたようなロードマップは実質破綻してますよね。
燃料電池関連の開発の問題っていうより、水素の製造・流通・管理コストを現実的にするような技術について。
...もっとも、本当に最新の情報はフォローできてないかもしれないですけど。

それなりのコストダウンとかも見えてきたハイブリッドの次の目標は、やっぱりディーゼルハイブリッドだと思うのですけど。
Posted by わき at 2006年05月18日 01:42
どうでもいい話で恐縮なのですが。。

ガソリン車はエンストしてもガソリン入れるだけで元どおり!!ですがディーゼルはエア抜きとか必要で、
絶対エンストさせないで下さい!!と昔、マツダ、カペラのディーゼルワゴンに乗っていて、エンストさせてJAFのお兄さんに注意されました。。

それだけなのですがね。。

レクサスのハイブリッドはフェラーリより0-400m
早いとかでしたっけ???

そんなに早くなくても??とも思ったり。。。

話題それてすいません。。
Posted by V2(えん) at 2006年06月21日 22:25
>ディーゼルはエア抜きとか必要で、

あっ、そうなんですか?
知らなかった。

>レクサスのハイブリッドはフェラーリより0-400m

忘れましたけど、
リクツとしては、モーターの方が速いってのは、当たり前だし。
もちろん結局最後はバッテリー性能次第なんですけど。

バッテリーさえ格段に良くなれば、モーターで速い車をつくるのは簡単なハズ。

つい最近、トヨタがプラグインハイブリッドをやるって公式に言いましたよね。

あれは期待大。

コンセントからエネルギーチャージした方が、遙かに安く付くのは目に見えているわけで。
ガソリン代...というか、エネルギー代を、大幅に節約できるはず。
Posted by わき at 2006年06月22日 23:46
>ガソリン車はエンストしてもガソリン入れるだけで元どおり!!で>すがディーゼルはエア抜きとか必要で、
>絶対エンストさせないで下さい!!と昔、マツダ、カペラのディー>ゼルワゴンに乗っていて、エンストさせてJAFのお兄さんに注意さ
>れました。。
エンストではなくてガス欠の間違いです。
確かに昔のディーゼルは機械式の燃料ポンプでの燃料噴射でしたからガス欠になってエアを噛んでしまった場合はエア抜きが必要でした。
しかし、今のコモンレール式のディーゼルはガソリン車と同じで長めのクランキングは必要でしょうが、エア抜きなんて必要ありませんよ。

以前はゴルフGTDというGTIのディーゼルエンジンに乗ってましたがトルクがあって楽しかったですよ。まぁ、そのときは黒鉛も出してましたが....
そんなわけで、新しいディーゼル発売されることを楽しみにして待ってます。
Posted by つる at 2006年07月29日 00:48
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